『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』”Solo: A Star Wars Story” 最高ではないが、最低でもない、スター・ウォーズ・シリーズのスピン・オフ作品


香港でも2018年5月25日に公開された映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』”Solo: A Star Wars Story”へ行った。

『スター・ウォーズ・エピソード8』の公開が、2018年の3月に終わったばかりなので、こんなに早くスピン・オフとはいえ、新しいスター・ウォーズ・シリーズに出会えるとは思わなかった。


踊る大香港:『スター・ウォーズ・エピソード8/最後のジェダイ』”STAR WARS Episode 8 The Last Jedi”のことを考えてみるの心だ


だが、結論から言うと、ぼくにはそんなに楽しめる作品ではなかった。その理由をネタバレも含め、これから書いて行く。


【あらすじ】

惑星コレリアでは、孤児たちは生きるために常套的に盗みを働いていた。特に強力な燃料コアキシウムは高値で売買される。若きハン(オールデン・エアエンライク)は、愛するキーラ(エミリア・クラーク)と奪ったコアキシウムを持ってこの星から逃げようとしていた。だがエアポートでゲートに入れなかったキーラとハンは離れ離れになってしまう。生きるために帝国軍に志願したハンは、その時、軍の試験官から”ソロ”という姓をもらう。

3年後、帝国空軍にいたハンは、戦場で命知らずの軍人トバイアス・ベケット(ウッディ・ハレルソン)に出会う。ハンはトバイアスたちがある計画を持っていることを知り、自分もその計画に参加したいと申し出る。だが、彼らはハンを信用せず、彼を檻の中に放り込む。その中にいたのは、毛むくじゃらのビースト、チューバッカだった。二人は格闘の末、一緒に脱出することを計画し成功する。それを見ていたトバイアスは、彼らをコアキシウムを積んだ列車強盗へ参加させるのだった…


【ぼくが『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』にノレなかった理由(ネタバレあり)】


ネ タ バ レ あ り ! !


製作者のキャスリーン・ケネディは、製作途中で監督をロン・ハワードに交代させた。それがどんな影響を与えたかはわからないが、この作品は見事に予定調和なものになってしまっている。つまりサプライズがないのだ。

脚本のローレンス・カスダン(『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』『レイダース 失われたアーク』)は息子のジョナサン・カスダンと一緒に本を書きあげた。ジェダイやデス・スターが出てこない世界で、彼らが宇宙の「西部劇」を作ろうとしたのは理解出来る。大列車強盗、たき火での語り、非情なボスとそのオンナ、仲間の裏切りなど西部劇の定番がここにはある。

だが、そこにスター・ウォーズらしさを出そうとして、宇宙の中でのタコのようなものとの戦い(駅馬車の襲撃なんだろう)を入れているが、これは「エピソード1」の水中シーンによく似ているし、コアキシウムを奪いに行く過程は、SWシリーズに毎回登場する敵の基地へ侵入してからの戦いをまたまたやっている。

そういう意味でプロットは平坦で、ハン・ソロの成長物語なんだが、全く成長しないまま終わってしまうのである(成長するのは、キーラだけ・笑)。

「007カジノ・ロワイヤル」が傑作足り得たのは、ボンドがヴェスパーの死を経験して、非情な男に生まれかわったところで終わるので、観客のカタルシスを得たのだ。この映画にはそれがない。


主役のオールデン・エアエンライクは、アメリカでの批評では、ハン・ソロ役をよくやりきったと評価が高いが、ぼくはあまり買ってない。それは彼の顔もそうだが、一番は「声」がハン・ソロって感じじゃないんだなぁ。セクシーと呼ばれる役者は声も大事だ。ハリソン・フォードの、あの野太い声に、大人になったらなるんだろうなぁ、という感じにさせないのである。ランド・カルリジアン役のドナルド・グローヴァーの方がはるかにリアリティを感じさせた。


観客の興味の中心は、チューバッカといかにして出会ったか?や、どうやってミレニアム・ファルコンを手に入れたか?なんだろう。

だが、そういうマニアックな事だけを楽しむ映画だと、子供たちには受け入れられないだろう。スペース・アクション・ファンタジーなんだから、もっと単純なストーリーで「映像で語って」ほしかった。それにセリフも多すぎるしね。


ラスト近く、クリムゾン・ドーンの大ボスとして、ダース・モールが出てきたのは驚いたなぁ。「エピソード1」でいなくなったはずなのに、「エピソード4」につながるストーリーでなぜ??

ぼくは「スター・ウォーズ エピソード 1~3」 でのジョージ・ルーカスの最大の失敗は、ダース・モールを「1」で殺しちゃったことだと思ってる。それにより大きな対決軸を生むことが出来なかったし、あのルックスの悪役を登場させないのは惜しいと思っていた。

だが、ネットで調べてみると、ダース・モールは「クローン・ウォーズ」では復活してたと書いてある。だから今回出てきたのか?そんな、マニア中のマニアしか知らない話を盛り込まれてもなぁ… というのが、映画でのSWファンの本音である。


そんなかんだで、ぼくはノレなかった『ハン・ソロ』。アメリカの興行では、コケてしまったらしい。それも理由がよくわかる。

当地香港では(アメリカと同時公開なので)、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の公開が、2018年4月25日、『デッド・プール2』の公開が、5月15日、『ハン・ソロ』が5月25日と、1ヶ月間に3本も似たような映画が公開になった。それに6月7日には『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が公開になる。つまり、一般の観客からすると、「そんなに映画ばっかりにお金を使えないよ」が本音だろう。しかも、「アベンジャーズ」と「ジュラシック・ワールド」なら子供を連れて行ってやろうか、と思うが、「デッド・プール」は(香港では)18禁だし、「ハン・ソロ」はSWファン向けだからな、と考えるのが普通だろう。そうなると、「ハン・ソロ」に群がるのは、一部のマニアだけ。ディズニーは、「SWエピソード4」が1977年に公開された5月25日にこだわり過ぎて、タイミングを見誤ったと思う。ま、けど『ローグ・ワン』に比べても、面白さという意味でも大分劣るんだけどね。


『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』アメリカでコケてしまった5つの仮説


スター・ウォーズ・ファンは「観ておかないと!」と思う映画だろうが、最高ではないが、最低でもないスピン・オフ作品。ま、この映画観て一番の収穫は、ランド・カルリジアンが”ドロイド・フェチ”だった!ということかな(笑)

てなことで。


SOLO: A STAR WARS STORY (2018)

Directed by Ron Howard


05-Jun-18 by nobuyasu

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