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町山智浩のVIDEO SHOP UFO 『泳ぐ人』"The Swimmer" (1968) を観た

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CSのザ・シネマで、「町山智浩のVIDEO SHOP UFO」という特集があったので日本で録画していたものを香港へ持ち帰った。ラインナップがよくて、未見の映画ばかりなので、ゆっくりと楽しんで観ていこうと思ってる。 町山智浩のVIDEO SHOP UFO  :ザ・シネマHP 今回観たのはバート・ランカスター主演の『泳ぐ人』”The Swimmer” (1968) 。アメリカン・ニューシネマの代表作と言われるが、それほど知名度の高い作品ではない。現在ではカルト作品として再評価されているというが、いったいどんな映画なのだろう? 町山智浩のVIDEO SHOP UFO 『泳ぐ人』前解説(洋画専門チャンネル ザ・シネマより) : YouTube 【あらすじ】 ニューヨーク郊外の高級住宅街。人々はプール付きの家で優雅に過ごしている。一人の中年男ネッド(バート・ランカスター)が水着姿のままプールに飛び込む。ネッドは、そこの住人と気軽に話し、ここから自分の家までは、プールが8箇所あるから、そこを泳ぎながら帰ると告げる。他人の家のプールに勝手に入っても叱られないのは、ネッドの家が丘の上にあることをみんなが知っているから。 最初のうちは、人々はネッドのことを歓迎するが、徐々にネッドが疎んじられているのがわかってくる。パーティをしている家では追い出され、市営プールでは、汚い足を洗えと言われる。そしてたどりついた自宅では・・・ 【町山智浩さんの後解説も含めたレビュー】(ネタバレあり) この映画は、登場人物のセリフ等を通して、主人公のネッドがどんな人間か、だんだんわかってくるという構成になっている。ネッドは、今は失業してるのはわかるのだが、どんな仕事をしていたのかは素人目にはわからない。 町山さんの解説によると、彼の仕事は、ずばり広告代理店の社員である。それは、2007年に始まったTVシリーズ『マッドメン』のスタッフたちが、「『泳ぐ人』をテレビドラマでやろうとした」と語っているので間違いないとのこと。 この『マッドメン』”Mad Men”は、60年代の広告代理店が、いかにおバカでひどいことをことをやらかしていたか、という様子を描いたドラマ。この題名は、マジソン街のMadとアホのMadをかけて

町山智浩のVIDEO SHOP UFO『バニー・レークは行方不明』”Bunny Lake is Missing” (1965) を観た

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CSのザ・シネマで、「町山智浩のVIDEO SHOP UFO」という特集があったので録画していたものを香港へ持ち帰った。ラインナップが面白くて、未見の映画ばかりだったので、一本ずつゆっくり鑑賞しようと思ってる。 #町山智浩のVIDEO SHOP UFO  : ザ・シネマ その中でも一番観たかったのが、オットー・プレミンジャー監督の映画『バニー・レークは行方不明』”Bunny Lake is Missing” (1965)である。観終わって、これは子供の頃に観ていたらトラウマになっちまうな、と思わせる大変気持ちの悪〜い映画だった。 町山智浩さんとは年齢が近いので、おそらく彼は昔テレビの洋画劇場でこれを観たのだろうと想像している (それ以来日本ではなかなかこの映画は観れなかった) 。だが、今観てもこれは強烈なインパクトを残す。彼が傑作だと言う意味もよくわかった。 解説(前説)は、YouTubeにアップされている以下(↓)の町山さんの語りを見てもらえればと思う。 あらすじは、アニー・レーク(キャロル・リンレー)がロンドンへ引っ越して来た初日、4歳のバニーを保育園に預けたがいなくなってしまう。ジャーナリストの兄スティーブン(キア・デュリア)もすぐに保育園に駆けつけ、警察からもニューハウス警部(ローレンス・オリヴィエ)が来て捜査を始めるが、保育園の中では、誰一人としてバニーを見た人がいない。はたしてバニーは見つかるのか?それとも、そもそバニーという女の子は実在するのか?というもの。 これはネタバレをしないで語るのはヒジョーに難しい映画の一本だ。だが、知ってから観ると、この映画のラストの衝撃を体験出来なくなるわけで、やっぱりやめておいた方が良いだろう。 町山さんの後解説によると、原作と映画はラストが違っているという。そういう意味で、これは脚本(ジョン&ペネロープ・モーティマー)の勝利かもしれない。 保育園の先生、食事係、園長も何か変で、アニーの隣人も、今ならセクハラですぐに訴えられるようなヌメッとした変態で、バニーの人形を修理に出したという店も不気味だし、なによりアニーそのものが、いつも不安げで本当の事を言ってるのかどうかがわからない。兄にも「アニーは子供の頃、想

『宇宙大怪獣ドゴラ』"Dogora-the Space Monster" (1964) 東宝特撮王国 HDリマスター版

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˙    香港から東京へ戻った時に録りだめしてた映画をBlu-rayに焼いて持ち帰った。その中の一本がこれ『宇宙大怪獣ドゴラ』。 日本映画専門チャンネルで、( また)始まった”東宝特撮王国”(2018年4月より)で放送されたHDリマスター版である。 1964年の東宝作品であるが、ぼくは未見だったので、怪獣好きとしては観とかんとあかんと思い、録画していたのだ。 本編の前に予告編があるのは、ファンとしては嬉しい。「地球SOS」「世界に誇る東宝特撮陣が、ゴジラ、モスラに続いて送り出す、話題の新怪獣ドゴラ!」「『宇宙大怪獣ドゴラ』にご期待ください」と言われて、期待して観たオレ(笑) (あらすじ) 地球を周回していたTV衛星が突如爆発した事件は、放射能によって突然変異した宇宙細胞の仕業だった。北九州地方に宇宙細胞が襲来、自衛隊必死の攻撃の前に細胞は消滅するが・・・。宇宙細胞ドゴラと人類の攻防を描くSFドラマ。軟体状の不定形生物のドゴラは、セルアニメや巨大な水槽を用いて表現されている。(日本映画専門チャンネルHPより) いやー、はっきり言って、これ「怪獣」映画なの?というモノだった(笑)。なんか浮遊する青いブヨブヨした物体が、地上の炭素を吸い上げる。ダイヤモンドもそれにあたるため、宝石店の中にも入ってきちゃうのだ。ストーリーは、そのため国際的な宝石強盗団と、警察ならびにダイヤモンドGメンとの追っかけがメインになっている。 特技監督の円谷英二は、この特撮には苦労したようである。今ならCGでチャッチャと出来ちゃうだろうが、この時代のテクノロジーでは、これで精一杯だったそうだ。なんせ、ソフビもまだ世の中に出てない時代だから。水の中にビニールを浮かべ動かしながら撮影したが、泡が出たり、水道局のカルキで水が白く濁ったりしたんだと。着ぐるみではない、不定形な怪獣を作りたかったが、何がなんだかわかんない怪獣となり、残念な結果となってしまった。 もし小学生の頃、この映画を観ていたら、ぼくは気に入らなかったと思う。やっぱり怪獣の特撮シーンが少な過ぎるからね。炭素を吸い込む怪獣だから、炭鉱のあった北九州地域を舞台にし、当時かかったばかりの若戸大橋をドゴラが破壊する。その破壊シーンもどう見てもアニメでやってるもんだから、

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』”Battle of the Sexes” 70年代に行われた男対女の世紀のテニス決戦を描く

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シンガポールからの復路、キャセイ機内で『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』”Battle of the Sexes”を観た。 好きな俳優の一人、スティーヴ・カレルと『ラ・ラ・ランド』でアカデミー主演女優賞を取った後のエマ・ストーンの共演ということで、前から観たかった映画だったのだ。 1970年代、女子テニス界のチャンピオン、ビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)は、男子の1/8しかない賞金の差に腹をたて、仲間と共に女子テニス協会を立ち上げ、各地を転戦する日々を過ごしていた。 そこに男性優位主義の象徴のような、往年の名プレイヤー ボビー・リッグス(スティーブ・カレル)から挑戦状を叩きつけられる。ボビーは、ギャンブル癖もあり、妻から別れを持ち出され、この試合に人生の一発逆転もかけていた。世界中が注目する中、二人の”Battle of the Sexes”の試合が始まる。 キング夫人(←昔はそう呼ばれていた)というと、ぼくも中学くらいだったか、ウィンブルドンを見てたら登場する強そうなおばはんというイメージしかなかったが、その当時は彼女がレズビアンだとは知る由もない。だって「キング夫人」だよ!(笑) この映画では、彼女がレズビアンになったきっかけが結構詳しく描かれている。転戦中にヘアスタイリストとして参加したマリリン(アンドレア・ライズボロー)と恋仲になってしまう。 転戦先のホテルを突然訪問した夫のラリー・キング(オースティン・ストウェル)が、部屋の中で他の女のブラジャーを見つけて、不倫を知る場面は、夫としての立場からみると痛ましい。 確かにウーマンリブの闘士としての側面は評価されるものだと思う。だが個人的には、不倫をして人を傷つけて離婚して、自分の幸せだけを追い求めるのもなんだかなぁ、と思ってしまう。 今まで映画を観て、こんな気分になったことはないのだが、これが実話だということ。それに男として「不倫をされた」立場を、こんな形で見せられたことがないのでそう思ったのだ。この場面は、それくらい見事な描写だと思う。 機内で観て困ったのは、ぼくの席がエコノミーの一番前、つまりモニター画面が前方のちょっと離れたところにあるもんだから、誰からも画面が見える。そこでビリー・ジーンとマリリンがベッドでチューチューやっ

『モリーズ・ゲーム』"Molly’s Game" 闇ポーカーゲームを主催する元モーグル選手の数奇な運命

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   シンガポール出張のキャセイ機内で観たのが『モリーズ・ゲーム』”Molly’s Game” 『ソーシャル・ネットワーク』の脚本で名を上げたアーロン・ソーキンの初監督作だったので興味を持って観た。 スキーのモーグル選手として、幼い頃から厳しいトレーニングを受けていたモリー・ブルーム(ジェシカ・チャステイン)は、ソルトレイク五輪の予選で転倒し重傷を負ったため、スキーを諦めざるを得なかった。 その後モリーはロスアンゼルスに移住し、クラブで働き始めるが、そこで知り合った不動産屋ディーン(ジェレミー・ストロング)の秘書として働くことになる。彼の仕事を手伝ううちに、非合法のポーカーゲームの運営に参加したところ、そこではあらゆる業種のセレブたちが集まり、途方もない金額のゲームが開催されていた。 彼女はあっと言う間に、集まったセレブたちに気に入られ、多額のチップをもらうようになるが、その事を快く思わないディーンに首にされてしまう。モリーは、それから自分でフォーシーズンズ・ホテルのスィートルームを舞台に、自分自身で新たなポーカーゲームの賭場を開くのだった。 だが、上客のプレイヤーX(マイケル・セラ)との確執から、賭場をニューヨークに移すが、やがてFBIから目を付けられてしまう。 映画は、モリーが頼る黒人の優秀な弁護士(イドリス・エルバ)とFBIとの裁判を軸に、ポーカーゲームの賭場で繰り広げられた様々なドラマを再現していく(←実話なので)。色んなエピソード、リッチな生活や、危ない目にもあい、若くしてスゴい経験をしたもんだなと思う。 だが、映画としてはちょっと長すぎるかな。2時間20分の尺の中に詰め込みすぎな感じ。特に弁護士との会話なんか、スピードが早い早い。そうしないと3時間超えの映画になっちまったかもね(笑) 裁判、ロスの賭場からNYの賭場へ、父親(ケヴィン・コスナー)との確執もあり、ボリュームが多すぎてお腹いっぱいになる分量だった。 モリー・ブルームの原作が”Molly’s Game: From Hollywood’s Elite to Wall Street’s Billionaire Boys Club, My High-Stakes Adventure in the World of Underg

『空手道』”The Empty Hands” 倉田保昭出演の新作香港映画!

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東京からの復路、キャセイ機内で、香港映画『空手道』”The Empty Hands” (2017) があったので嬉しくなって観た。理由は、あの倉田保昭が出てるからである。 倉田保昭は、我々ブルース・リー世代のおっさん達には、ある意味千葉真一よりもスゴい空手スターという認識がある。70年代から香港クンフー映画で活躍していた彼は、ブルース・リーとも面識があったからだ。 倉田保昭は今でも香港では有名で、この映画でも今年2018年の香港電影金像奨(香港映画大賞)で、助演男優賞にノミネートされていた。 倉田保昭が演じるのは、日本人の平川彰という人物。70年代に日本の会社から現地駐在で香港に来て、香港人の女性と結婚。空手ができたものだから、その後ワンチャイに道場を開いたという役である。妻とは離婚し、今は娘と二人で道場で暮らしている。 映画は、その平川彰(倉田保昭)が道場で倒れ、亡くなっているところから始まる。 一人娘の真理(ステフィー・タン)は、道場の相続の際、権利の半分は、道場の元弟子でヤクザになったチャン(チャップマン・トウ)にあることがわかる。真理は、子供の頃、期待されていたにも関わらず、演武の失敗から、空手から遠ざかり、父娘の関係も決して良いとはいえないものになっていた。特に自分が、ラジオDJと不倫をしていることは父と距離をおく大きな原因になっていた。 映画は、その後、ヤクザが足を洗い、道場をなんとかしようとするが上手くいかない。そして、真理が徐々にトラウマを克服し、父の思いに心を寄せて空手道場をやっていこうと思うようになる、というもの。 観る前は、もっと感動する映画かと思ったが、ちっともそんなことはなかった。97分と短い映画ながら、主人公の真理が不倫をやめて人生やり直すまでに1時間くらいかかるもんだから、『ロッキー』のような展開にもならず、盛り上がることもなく映画は終わった。 主演も兼ねてる監督のチャップマン・トウは、日本では『インファナル・アフェア』の間抜けなヤクザ役で知られてるが、香港では人気もあり、こうやって監督・主演の映画も撮っている。だが、この映画は面白くなかった。正直言って時間の無駄だった。 出演者たちは、何かあるとやたらと「一蘭」へ行ってラーメンを食べたり、日本の居酒屋風の店で