『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』”Battle of the Sexes” 70年代に行われた男対女の世紀のテニス決戦を描く


シンガポールからの復路、キャセイ機内で『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』”Battle of the Sexes”を観た。

好きな俳優の一人、スティーヴ・カレルと『ラ・ラ・ランド』でアカデミー主演女優賞を取った後のエマ・ストーンの共演ということで、前から観たかった映画だったのだ。

1970年代、女子テニス界のチャンピオン、ビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)は、男子の1/8しかない賞金の差に腹をたて、仲間と共に女子テニス協会を立ち上げ、各地を転戦する日々を過ごしていた。
そこに男性優位主義の象徴のような、往年の名プレイヤー ボビー・リッグス(スティーブ・カレル)から挑戦状を叩きつけられる。ボビーは、ギャンブル癖もあり、妻から別れを持ち出され、この試合に人生の一発逆転もかけていた。世界中が注目する中、二人の”Battle of the Sexes”の試合が始まる。

キング夫人(←昔はそう呼ばれていた)というと、ぼくも中学くらいだったか、ウィンブルドンを見てたら登場する強そうなおばはんというイメージしかなかったが、その当時は彼女がレズビアンだとは知る由もない。だって「キング夫人」だよ!(笑)
この映画では、彼女がレズビアンになったきっかけが結構詳しく描かれている。転戦中にヘアスタイリストとして参加したマリリン(アンドレア・ライズボロー)と恋仲になってしまう。
転戦先のホテルを突然訪問した夫のラリー・キング(オースティン・ストウェル)が、部屋の中で他の女のブラジャーを見つけて、不倫を知る場面は、夫としての立場からみると痛ましい。

確かにウーマンリブの闘士としての側面は評価されるものだと思う。だが個人的には、不倫をして人を傷つけて離婚して、自分の幸せだけを追い求めるのもなんだかなぁ、と思ってしまう。

今まで映画を観て、こんな気分になったことはないのだが、これが実話だということ。それに男として「不倫をされた」立場を、こんな形で見せられたことがないのでそう思ったのだ。この場面は、それくらい見事な描写だと思う。

機内で観て困ったのは、ぼくの席がエコノミーの一番前、つまりモニター画面が前方のちょっと離れたところにあるもんだから、誰からも画面が見える。そこでビリー・ジーンとマリリンがベッドでチューチューやってる場面が映し出され、そのタイミングで食事を持ってCAさんが来たりして、やっぱ恥ずかしかったなぁ。「あのおっさん、レズビアンの映画観てんのか?」と思われただろう(笑)

コメディだと思って観ていたが、あまり笑うところもなく、〈世紀の一戦〉と呼ばれたテニスの試合に至るまでも、だんだんと盛り上がって行くこともなかった。スティーヴ・カレルも、ぼくがボビー・リッグスのことをよく知らないのもあり、笑えるとこもほとんどなかった。

期待していたほど面白い映画ではなかったのが残念だが、今の時代に、この女性を主人公にして、男性と戦う映画が製作された意図を考えてみる必要があるだろう。
監督のジョナサン・デイトンとヴァレリー・ハリス(『リトル・ミスサンシャイン』)は「意図的ではなかったが、ヒラリー・クリントン対ドナルド・トランプの図式が当てはまる」とインタビューで話している。アメリカでの高評価はこういうことが理由だろう。そういう目で観るとまた違った味わい方がある映画だと思う。

Battle of the Sexes (2017)
Directed by Jonathan Dayton and Valerie Faris

04-May-18 by nobuyasu


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